2022年3月18日金曜日

卒業する君へ

君は私と妻にとって、待望の長男だった。

私たちは2003年に結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。夫婦二人の生活は気楽で幸せではあったけれど、愛する子どもが授からないという一点においては、長く苦しいトンネルの中にいた。
そんなところへ、ようやく舞い降りてくれた天使。まさにそれが君だった。

妻のお腹に小さな命が宿ったと知った時、天から一筋の光が差したような、足が地面から浮き上がったような、一点の曇りもない幸せが目の前にぱあっと開けたような、なんとも不思議な感覚だったことを覚えている。

そして、君が私たちのもとに生まれてきた日、あのとても暑くて長い1日のこともいまだ鮮明に覚えている。君は3,132gと決して小さく生まれたわけではないのに、我が子とはこんなにも小さくて儚げなものか、この命を大切に大切にしないと、ちょっとでも油断するとまた天に帰ってしまうのではないかという戦慄すら感じた。

そして私たち夫婦は、二人の持てるだけの愛も財も時間も、めいっぱい君に注ぎ込もうと思った。幸いにも、君は素直で可愛く、明るく利発で優しい子どもだった。私たちは、君の笑顔に癒され、日一日とできることが増えていく姿に喜びを噛み締める、そんな毎日を暮らしてきた。

お世話になった保育園を卒園し、小学校に君が入学した日のことも、昨日のことのように覚えている。当時から身体が大きい方だった君にも、まだまだ不釣り合いなほどランドセルは大きかった。そして2年生、3年生、4年生とランドセルが似合うようになり、勉強に運動に遊びにと、小学生を目一杯楽しむ君がいた。私たちには、君は絵に描いたような、素直で理想的な成長をしてくれていると見えていた。

そんな君に、もっともっとと期待してしまった。期待しすぎた結果、君を苦しめてしまった日々があった。私たちの想像よりずっと早く思春期の入口にやってきた君に、親が追いつけていなかった。本当に申し訳なかった。

それでも軌道修正の後、少年から青年に向けてまた明るい道を歩み始めてくれたと信じている。友達と戯れあって笑顔溢れる君の姿は、私たちに胸を撫で下ろさせてくれる。

ほとんどの大人がそう言うと思うが、私自身の経験からもやはり言えるのは、挫折のない人生はないということ。君にも、これからバラ色だけの未来が待っているわけではない。山あり谷あり。だけど苦しい時や挫折を感じた時、それを力強く乗り越えていくパワーが人生を切り拓いてくれる。順風満帆なだけでは、そのパワーを養うことはできなかった。少しの挫折も、君の人生にとって必要な寄り道だったと思いたい。

これから山もある、谷もある。嬉しいことも楽しいことも、悔しいことも悲しいことも腹立たしいこともたくさんある。でも、それこそが人生だ。
そして、これまでは親に庇護された世界で暮らしてきたが、これからは自分だけが頼りと感じる場面にも多く出くわすだろう。選択に迷い、誰にも相談できないと思うことも出てくるかもしれない。

中学生になる君へ、一つだけ伝えたいことがある。それは、君の家族はいつも君の味方だということだ。君は一人ではない。私たちは、たとえ世界中を敵に回したとしても、君の味方をする。